声質を整える、Logic Proの設定ガイド
2026.07.28
配信や動画制作で「声がこもって聞こえる」「音量の差が激しい」「歯擦音(サ行)が刺さる」といった悩みは、マイクや機材を買い替えなくても、Logic Proのプラグインチェーンを整えるだけでかなり改善できます。
こちらの記事では、Logic Proを使って、配信・朗読向けに声を整えるための、基本的なプラグインの並び順と設定値を解説します。
目次
全体の考え方(プラグインの並び順)
声を整えるプラグインは、チャンネルストリップの上から下に向かって、以下の順番で並べるのが基本です。
- Noise Gate(無音時のノイズを消す)
- Channel EQ(不要な帯域を削る)
- Compressor(音量の起伏を整える)
- DeEsser 2(歯擦音を抑える)
- Space D等のリバーブ(Sendで薄く。任意)
この順番には理由があります。まずゲートでノイズを止め、EQで声の土台を整えてから、コンプで音量をまとめる。歯擦音を抑えるディエッサーは、音量がある程度均一になった後にかける方が安定して効きます。リバーブは最後に、ごく薄くかけるのが基本です。
録音レベルの設定
プラグインの前に、まず録音レベル(インターフェースのGAIN)を整えます。
- 目安は、普段の声量のピークで -12dB〜-18dBFS に収まる程度
- 大きすぎると、大きな声を出した瞬間にクリップ(音割れ)する
- 小さすぎると、後段のコンプやEQでノイズも一緒に持ち上がってしまう
インターフェースのGAINつまみを少しずつ調整しながら、実際に普段の声量で読んでみて、Logic側のメーターを確認するのが確実です。
Noise Gate(ノイズゲート)の設定
しゃべっていない間の、部屋の環境音(エアコン、PCファンなど)を無音にするためのプラグインです。
- Threshold:部屋の暗騒音より少し上に設定する。低く設定しすぎると、静かな語尾の声まで削れてしまう
- Attack:1〜3ms程度。速めに設定し、語頭の子音が削れないようにする
- Hold:100〜150ms程度。短すぎると、息継ぎや間(ま)の直前でゲートが早く閉まり、不自然な切れ目になる
- Release:150〜300ms程度。速すぎると「プツッ」というクリック音が聞こえることがある
つまずきやすいポイント:ゲートは「声が出ている間、鳴っている音をまるごと通す」仕組みです。声とノイズが同時に鳴っている間のノイズまでは除去できません。しゃべっている最中のノイズが気になる場合は、ゲートの設定を追い込むより、先に周囲のノイズ源(エアコン、PCファンなど)を物理的に止める方が効果的です。
Channel EQ(イコライザー)の設定
- ハイパスフィルター:80Hz付近でオン。部屋の低い環境音や、マイクスタンドを通じて伝わる振動ノイズを削る
- 300〜500Hz帯:軽くカットすると、声のこもりが取れて明瞭になる
Compressor(コンプレッサー)の設定
声の大小の差を整えるプラグインです。Logic純正のCompressorには、複数の回路タイプ(Circuit Type)が用意されていますが、「Studio VCA」または「Platinum」が、癖が少なく声に素直にかかるのでおすすめです。
- Threshold:ここから下の音量が圧縮される、基準ライン
- Ratio:3:1〜4:1程度
- Attack:5〜15ms程度
- Release:100〜200ms程度
目安:実際に声を出しながら、GR(ゲインリダクション)メーターが、大きめの声のところで**-6〜-8dB程度**振れるくらいに、ThresholdとRatioを調整します。
つまずきやすいポイント:ThresholdとRatioは、セットで考える必要があります。たとえば録音レベルのピークが-12dBの場合、「Threshold −20dB」で「Ratioが2:1程度」だと、超過分(8dB)の半分(4dB)しか圧縮されず、GRメーターがほとんど動きません。狙った圧縮量(dB)は、おおよそ「(録音レベルのピーク − Threshold) × (1 − 1/Ratio)」で決まります。GRメーターの動きが小さいと感じたら、Thresholdをもう少し下げるか、Ratioを上げてみてください。
また、常にしっかり圧縮がかかっている状態だけが正解とは限りません。声の音量がもともと安定している場合、GRメーターがあまり動かないのはむしろ自然なことです。数値上の目安にこだわりすぎず、実際に聴いてみて、音量の起伏が気にならないかどうかで最終判断するのがおすすめです。
DeEsser 2(ディエッサー)の設定
サ行・タ行の刺さる歯擦音を抑えるプラグインです。
- Frequency:5〜8kHzの範囲。「さしすせそ」と発音しながら動かし、一番耳障りな響きが減るポイントを探す
- Range(かかりの強さ):まずは6〜10dB程度から。強すぎると声が不自然にこもるので、Reductionメーターの動きを見ながら調整する
- Mode:Split(帯域分割)の方が、歯擦音以外の音質への影響が少なく、より自然にかかる
配信者・VTuberにおすすめの実践的なEQ・コンプ設定例
配信時の声をクリアに届けるため、Logic Pro上で設定すべき具体的な推奨数値をまとめました。
- ローカット(ハイパスフィルター):
80Hz〜100Hz以下をカット
マイクスタンドの振動音や部屋のエアコンの重低音ノイズを除去します。 - イコライザー(EQ)の調整:
200Hz〜400Hzをわずかに(-2dB程度)下げる
声の「こもり感」が消え、言葉の輪郭がハッキリと聞こえるようになります。 - コンプレッサーの設定:
- Ratio(圧縮比):
2.5:1 〜 3:1 - Attack:
15ms 〜 25ms - Release:
100ms 〜 150ms
叫び声や大笑いした際の音割れを防ぎつつ、小さな囁き声も聞き取りやすい一定の音量レベルに揃えられます。
リバーブは「Send」で薄くかける
インサートで直接かけると、原音とリバーブの比率をMixのつまみだけで調整することになり、声の輪郭が削れやすくなります。
- 別にAUXトラック(バス)を1本作る
- そのAUXトラックにリバーブを挿し、Mixは100%(フルウェット)にする
- 声のトラック側のSendから、そのAUXバスへ、ごく少量だけ送る
こうすることで、原音の明瞭さを保ったまま、部屋の空気感のような、薄い響きだけを足すことができます。配信のような用途では、ディレイタイムを短め(40〜50ms程度)、Feedbackも控えめにすると、こだま感が出すぎず自然です。
よくあるトラブルと対処法
GRメーターが全然動かない 録音レベルとThreshold・Ratioの関係を見直してください。前述の計算式を参考に、ThresholdをGain値に近づけるか、Ratioを上げてみてください。それでも動きが小さい場合、声自体の音量差が少ない可能性もあります。その場合は無理に圧縮量を増やさず、実際に聴いた印象を優先して問題ありません。
声にノイズが混ざる ゲートが開いている間(=声を出している間)のノイズは、ゲートでは除去できません。まず周囲のノイズ源を止め、それでも残る場合は、Adobe PodcastのEnhance Speechのような、録音後にノイズ除去をかけられるツールを併用するのがおすすめです。
マイクに近づけすぎて音が割れる/こもる マイクに正対せず、少し斜め(オフアクシス)に口を向けると、吹かれ(ポップノイズ)を抑えつつ、近接効果による声の温かみを活かせます。ポップガードの使用も効果的です。